課題発見力を鍛える【自己トレーニング】
課題収集
課題発見力を高める方法。
そもそも問題とは何か
詳しくはこちらで紹介していますが、問題には大きく3種類あります。
①発生型:すでに表面化していて、明確に見えている問題。
②設定型:自ら目標設定し、達成する上で発生する問題。
③潜在型:まだ表面化していないけれど、これから発生する可能性がある問題。
課題発見力とは
課題発見力とは、
経済産業省が2006年に提唱した社会人基礎力のひとつで、「現状を分析し目的や課題を明らかにする力」と定義されています。
個人が企業・組織・社会と関わる時間が長くなるなかで、ライフステージの各段階で活躍し続けるためには、「自ら課題を提起し、解決のためのシナリオを描く自律的な思考力」が必要です。
課題発見力と類似するものに問題解決力がありますが、すでに誰かの手により発見されている問題を解決する問題解決力に対して、課題発見力は問題がないとされる状況でも未来を見据えて自ら新たな課題を発見する力とされています。
「現状を把握・分析し、問題を見つけていく力」
そして、とくに3つ目の「潜在型」の問題を見つけることは、難易度が高いため、周囲と差別化するためにもぜひ身に着けていただきたいスキルです。
課題発見力を磨くことで、個人のスキルアップにつながるだけでなく、社内における業務効率化やサービス品質の向上、ミスやトラブルの抑制効果など、さまざまな場面で求められる能力といえるでしょう。
つまり、
- 問題解決力:既に発生している何らかのトラブルを解決していく力
- 課題発見力:表面上はトラブルが発生していない中で、自分から課題を見つけ出していく力
と分類できます。
問題解決力と課題発見力の違いを知るため、簡単な例を出してご説明します。
例えば、ある営業職のアポイントメント取得ノルマが月間50件であったとします。問題解決力は、「毎月のノルマが50件に達していない事態にどう対応するべきか?」を考える能力です。一方の課題発見力は、「毎月のノルマは達成しているが、それをもっと増やすためには何ができるか?効率的にノルマを達成するには何を変えたら良いか?」を考える能力を指すという違いです。
セルフマネジメントのひとつとして問題解決力も身につけておきたいところですが、潜在的な課題を見出しそれに挑んでいく課題発見力は、競争力を求められるビジネスマンにとって必要不可欠となる能力です。高い課題発見力を身につけていれば、100を200に変えられるようなビジネスパーソンとなれます。そうすれば、思い描いた通りのキャリアプランを実現できる可能性は、自然と高まっていくでしょう。
課題発見力は社会人に必須のスキル
課題発見力を持った人材がいない環境では、誰もが指示待ちの状態になってしまい、会社の競争力を高めたり問題の発生を未然に防ぐことはできないでしょう。
すでに明確になっている問題を解決していく力を持った人材も会社には必要ですが、一歩先のレベルで未来を見据え、さらなる成長に取り組んでいく課題発見能力は、特にマネジメントをする立場の人材には必須の能力といえます。
また、AIが発展していくこれからの時代、単純作業や情報収集など人間がおこなっているさまざまな業務がAIにとってかわられると予想されていますが、AIが不得意なことのひとつが「課題発見」だといわれています。
代替のきかない存在であり続けるために、課題発見力を磨き続いていくことが社会人にとって重要な時代になっています。
問題を発見するための3ステップ
問題解決力を高めるためには、「この日常が永遠に続くとは考えない」ことです。
つまり、日常を日常と捉えずに、「何か問題があるはず」「このままいくと、将来何か起こるはず」と考えることが大事です。
こういった意識を持つことを前提として、問題を発見するためのプロセスをご紹介します。
ステップ①:少し先の理想(ありたい姿)をイメージする
日常的な課題だとすると、3ヵ月~半年先くらいの理想の状況を考えてみましょう。
理想を想像するために、「もっとこうだったらいいのにな」と、現状に不満を持ってみることも有効です。
ステップ②:現状起点で理想をとらえる
このまま日常が続いていくと、①で描いた理想の状況に到達するのか、それとも到達しないのか。
そういったことを考えてみてください。
ステップ③:理想と現状のギャップを考える
もし理想の状況に到達しないようであれば、現状の進捗スピードと比べて、どこにギャップがありそうなのかを考えてみましょう。
そのギャップが「課題」となります。
課題発見力を高める方法
課題発見力を身に着けるための3つのポイントを紹介します。
方法①:ゼロベース思考を持つ
セロベース思考とは、前提や思い込みを一旦「ゼロ」にして考える思考です。
人間は、ついつい自分の経験や、今までの延長線上で物事をとらえてしまう癖があります。
テクノロジーの変化が激しく、ビジネスでも根本のルール自体がひっくり返されることが多々起こる今、ゼロベース思考は重要視されている能力の1つです。
ゼロベース思考は、3つの力から構成されます。
【1.前提を疑う力】
私たちは、2つのオプションを提示されると、ついその2つの中から選択してしまいます。
「そもそもこれ以外のオプションがあるのではないか?」と考えるのが、前提を疑う力です。
【2.目的に戻る力】
あれこれと考えたり、議論をしていると、つい本来のイシュー(課題、論点)からずれていくことがあります。
イシューを押さえ続ける力も必要となります。
【3.森を見る力】
今どこの話をしているのかを全体構造で考え、それぞれの要素とのつながりを意識して捉えることが大事です。
ゼロベース思考の注意点としては、ゼロに引っくり返すだけではだめということです。
例えば、議論の中でしてしまうと、ただの感じの悪い人になってしまう可能性があります。
代替案まで出して価値があるので、セットで考えるようにしましょう。
方法②:クリティカルシンキングを身に着ける
前提を疑う力を鍛えるには、自身の「思考の癖」に気づくことがポイントとなります。
思考の癖を改善するのは、「クリティカルシンキング(批判的思考)」という、意識的に自分の考えを批判的にみる思考法が有効です。
クリティカルシンキングを鍛えることで、主観や先入観に捕らわれずに物事を見る力が養われていきます。
一方で、クリティカルシンキングは、書籍を読んだり、動画を観ただけでは、なかなか習得が難しい思考法でもあります。
方法③:未来志向で現状をとらえる
「この先の未来にはどういったことが起こりそうか」
今の日常が永遠に続くとは考えず、常に意識を未来に向けて現状をとらえる癖をつけましょう。
未来志向は、日ごろから様々なことに好奇心を持って情報収集し、自分なりの仮説を立てる習慣を持つことで磨かれていきます。
課題発見において注意すべきこと
課題は解決してこそ価値があるので、発見するだけで満足や終わりにしないようにしましょう。
また、課題を指摘するだけの「評論家」になると、「なんだ、この人は」と思われるかもしれません。
課題を発見したら、課題解決全体のプロセス(課題発見~解決策の立案~計画~実行)にしっかりと責任を持つという意識が非常に重要です。
会社や個人が目指す姿と現状の間にある課題をみつけ、成長の足がかりとするために、課題発見力について理解し、課題発見力を身に着けられるようにしましょう。
課題発見力が役立つ場面
課題発見力は経営陣や管理職に限らず、さまざまな職種・業種で働く社会人の、日々の業務やキャリアアップで役に立つ力です。
どのような場面で課題発見力が役立つか見ていきましょう。
マネジメントが必要な場面
会社やチームの目標を設定したり、部下の動機づけや指導をおこなうマネジメント職において、現状を分析し目的や課題を明らかにする課題発見力は不可欠な能力です。
現時点での目標が達成されているときでもさらなる発展に向けて課題をみつける、部下の成長のためには何が必要で何が妨げになっているのかを考えコーチングをおこなうなど、マネジメント能力が求められる場面では課題発見力が大きく役立ちます。
商品開発が求められる場面
優れた商品やサービスを開発するためには、既存の商品では何が足りないのか、もっと顧客満足度を上げるにはどうすればよいのかなど、考えるべき課題がたくさんあります。
モノやサービスに新たな考え方や技術を取り入れて今までになかった価値を生み出すイノベーションにおいても、革新的な技術の実現を可能にするために課題発見力が役立つでしょう。
業務効率化に取り組む場面
業務効率化を進めるには、今まで当たり前だったことを疑い、よりよい方法を常に探求し続ける必要があります。
課題発見力があれば現状のやり方を精査し、問いを持ち続けながら新たな視点で問題点をみつけ、従来にないやり方で業務効率化を実現することができるかもしれません。
現状を分析しどこに課題や改善の余地があるかを見極められる課題発見力を活かすことで業務効率化の糸口を見つけることにつなげられるでしょう。
職場環境改善の場面
会社が従業員にとって働きやすい環境かどうかは、生産性や定着率に影響します。長年働いている社員にとっては慣れていても、新しいメンバーから見れば馴染みにくい環境ということもあるかもしれません。
全体を見通す視点を持ち、誰にとっても働きやすい環境をかなえるためには何が必要なのかを公平に考えるには、課題発見力が必要でしょう。
これまで当たり前であったことも、状況や環境の変化では不適切になる場合は多々ありますので、周囲の意見を踏まえたうえで柔軟な発想を持って課題発見に取り組むことが重要です。
キャリアアップを目指す場面
個人のキャリアアップを実現するためにも、冷静に自分の現状を振り返り、理想とする姿に近づくために足りないものを考える課題発見力は必須です。
また、課題発見力がある人材はマネジメントに限らずどんな職種においても求められているため、スキルを磨いておいて損はありません。
自身の課題も部署やチームごとの課題、業務に関する課題など客観的な視点で課題発見をできる能力が活かせる場面は多いので、課題発見力が高まることでキャリアアップを目指すことができるでしょう。
課題発見力を高めることでさまざまな場面でより力を発揮できるようになります。
課題発見力を鍛える具体的な方法を紹介します。
コミュニケーションスキルを身につける
課題発見力の第一段階「現状を分析する」という行為において、コミュニケーションスキルは非常に重要になります。
現状分析のためのヒントを集めるには、自分ひとりの力ではなく、現場の従業員や数字をみている管理職など複数のひとの意見や感じていることを聞き出す必要があるでしょう。
5W1H(いつ、どこで、誰が、なにを、なぜ、どのように)を整理しながら話を進める、仮説を立て相手に気づきを与える質問をする、話すスピードと声の大きさをあわせるペーシングをおこなうなど、コミュニケーションスキルやヒアリングスキルを高める方法にはいろいろなものがあります。
ひとつひとつ試しながら、会話のなかで情報を引き出す力を身につけていくとよいでしょう。
構造化スキルを身につける
ヒアリングした内容を理解・把握し、「こういうところが課題なのでは」「こういう方法を用いれば解決できるのでは」と提案するには、自分の考えを相手に伝わりやすく整理し組み立てる必要があります。
理解力・論理展開力のどちらにも共通するのが、事象を図式化して理解したり考えるのに「構造化スキル」が必要です。
まずは簡単に図式を書いてみる、説明したい物事の分類をして整理するなど、図式化して考え方のトレーニングをしてみるとよいでしょう。
簡単なトレーニングとして取り入れられるのは、新聞や雑誌の記事を読み、構造図を書いてみること。文字数の少ない記事から始め、少しずつ長いものにもチャレンジしてみましょう。
整理されていない会話や文章を頭の中で図式化するクセがつき、要点のはっきりしない内容でも「つまりAの問題にはBとCが影響しているということ」とすっきり言い換えることができるようになれば、構造化スキルが身についてきたといえるでしょう。
ゼロベース思考を身につける
自分の経験に基づく前提や思い込みをゼロにして考えることは、課題発見力を発揮する上で大切なポイントです。
前提を疑い、目的を忘れず、物事を全体的に俯瞰して見る「ゼロベース思考」を身につければ、物事を柔軟に考えることができます。
ゼロベース思考のトレーニングには、メモを活用するという方法があります。
「新しいサービスの開発」など何かひとつテーマ決めたら、紙に重要だと思う点や妨げになりそうな点をメモします。次に、前提をなくして考える際に邪魔になりそうな既存の知識や過去の経験も書き出してみましょう。
ここまで書いたら先入観をすべて捨て、知識のないアマチュアになったつもりで極力単純にテーマについて考え直してみます。
重要だと思う点、どうあるのが理想か、もし難しいと感じるなら何がその要因だと思うかなどを、思考停止しないよう初歩的な視点で自由に書き出します。
最後にすべてのメモを見ながら、テーマを実現するために何が大事なのか、考えをまとめてみましょう。既成概念を捨てて物事を考える訓練で、ゼロベース思考を少しずつ鍛えることができます。
課題発見力を適切に発揮するための注意点
課題発見力を発揮するうえで忘れてはいけないのが、課題の発見だけで満足せず、解決方法もあわせて考えるということです。
コミュニケーションスキルで現状を分析し、ゼロベース思考で課題をみつけ、構造化スキルで相手にうまく伝えられるようになっても、現状に対して批判的なだけではただの評論家とみなされてしまいます。
また、大した問題ではないのに大きな課題があるように伝えたり、課題とはいえないのに無理矢理に課題があるかのようにするのは混乱を生むだけです。
本当に課題発見力があると認められるためには、解決方法まであわせて提案し、最後まで実行に責任を持つ必要があります。
一方的に課題を指摘するだけで終わるのは無責任といえ、周囲も話を聞く気にはならないでしょう。
物事を分析し課題を見つける際には、「必ず解決方法はある」という前提に立ち、柔軟に考えて、改善に向けた責任やアイデアを持たなければいけません。
ただ単に、課題を指摘して批判的な立ち位置になるだけで終わらないように注意して、適切に課題発見や改善に取り組めるようにしましょう。
構造化スキルやゼロベース思考のトレーニングをしながら課題発見力を鍛えることで、日々の業務に活かせる場面は多くあるでしょう。
課題発見のために現状をしっかり把握するには、上司や同僚、現場をよく知る従業員とのコミュニケーションも重要になります
課題発見力の第一段階「現状を分析する」という行為において、コミュニケーションスキルは非常に重要になります。
現状分析のためのヒントを集めるには、自分ひとりの力ではなく、現場の従業員や数字をみている管理職など複数のひとの意見や感じていることを聞き出す必要があるでしょう。
「評論家タイプ」にはならない
何か問題が発生してから「自分は危ないと思っていた」と批評する評論家タイプは、職場でもたびたび見られます。しかし、企業で重宝されるのは、問題が発生した後で批評する人材ではなく、問題の因子となりそうな課題をあらかじめ指摘できる人材です。何か課題が見つかった際、「この課題が後々大きな問題になるのではないか」とさまざまな可能性を考慮し、解決に向けた行動を取るようにすれば、課題発見力は磨かれていくでしょう。
まとめ
課題発見力を鍛えるには、「ゼロベース思考」「クリティカルシンキング」「未来志向」の3つがポイントとなります。
課題発見力とは?課題発見力が役立つ場面と課題発見力を鍛える方法現状に満足をせず、現状をより好転させるために何ができるか「未来への次の一手」を考える力です。商品開発や経営方針決定、職場環境改善などの様々な場面において必要とされる能力ですが、言われるがまま仕事をこなすだけでは磨かれることはありません。そのため、人によっては課題発見力を磨くために仕事との向き合い方・考え方を大きく変えなければいけない方もいるでしょう。
課題発見力は、会社の事業を大きくする、部下をマネジメントする、優れた商品やサービスを開発するなど、社会人があらゆる場面で求められる能力です。自身のキャリアアップのためにも、ぜひ課題発見力を磨くことをおすすめします。
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